※学園パラレルとなってます。
伊達主従は生徒会役員、慶次は…特に考えてなかったり(爆)
正直、その片鱗を見せる場面もあまりないのですが、こっそり頭に置いといてやってください。
【Do you know?】
前田慶次という男は、人を信じ過ぎる節がある。
知り合って、自分が良い人だと思ったら、とにかく信じる。
それがいいところでもあり、逆に悪いところでもあるのだが。
そして伊達政宗という男は、前田慶次のそういうところも気に入っているのである。
更に片倉小十郎という男も、伊達政宗と同じく、気に入っているのであった。
つい先日も、また。
「なあ慶次」
「なんだい?」
「映画館のLadies dayって、知ってるよな?」
「ああ、アレだろ?女の人だけ安くなる日。あれ、いいよなー」
政宗は、指をゆっくりと左右に振りながら、4度、舌を鳴らす。
不思議そうに慶次は首を傾げる。
「甘いぜ、慶次…実はな、あれは女が全員…って訳じゃないんだぜ」
「えェ!?れ、レディースデーなのにか!?」
予想通りの驚きに、思わず口元が緩む。
コホンと一つ咳払いをし、政宗は話を続ける。
「世の中には、女にそっくりな男だっている」
「おう」
「顔だけじゃ判断出来ない、かといって身分証明を出すなんてお堅い真似も出来ねェ…さあ、その場合アンタならどうする?」
「どうするって…どーすんだよ」
「Skirt、だ」
「……はァ?」
「Skirtを穿いていれば、女だって見分けが付くだろう?男なら普通穿かないからな」
「あー、成る程。そりゃ確かに!」
「ということは、逆もまた然りだ…you see?」
「え、どういうことだい?」
身を乗り出して話に食い付いていく慶次の姿を、微笑ましくも、どこか哀れみを込めた眼差しで見守るのは、政宗の後ろに控えていた小十郎。
視線で促され、溜め息混じりに話し始める。
「いいか、スカートを穿いていれば女に見られてレディースデーに割り引かれるなら、男だってスカートさえ穿けば大丈夫だってことだ」
「えェ!?なんでだよ!!男は男だろ!ゴッツいのだっているんだぜ!」
「だが前田、女にだって男みたいにゴツい人はいる。そんな人に店員が女ですか?なんて、聞けると思うか?」
「…いや、そんな失礼な事は…」
「だろう?だから、スカートさえ穿けば男もレディースデーを活用できる…そういうことだ」
「はー…知らなかった…。…うん、勉強になった!」
などと、こんな話を本当に信じる者などいないはずなのだ。
政宗も、小十郎も、バレると分かっている上で慶次をからかう。
からかうのだが。
「政宗ッ!!小十郎さんッ!!」
「What?」
息巻いて、二人の前へと慶次は仁王立ち。
「レディースデー、嘘吐いただろっ!!」
「…やはり、信じたか…」
「佐助に大笑いされたんだからなっ!幸村は信じてたけど…すっげ恥ずかしかったんだぞ!!」
嗚呼。
明らかに嘘とわかる嘘さえも鵜呑みにして信じてしまう、馬鹿が付くほどの素直さが愛しい。
そして。
拳を握り締めながら怒る姿も可愛いと。
そう思ってしまう辺り末期なのだろうとぼんやり政宗は考える。
小十郎はというと、溜め息を吐きながらも口許はやや弧を描いて。
「大体二人とも、なんで俺のことからかうんだよ!毎回毎回どれだけ俺が…!」
鼻息荒く問いかけるそれは、愚問と言うものだ。
二人は顔を見合わせる。
短く、息を吸い込む。
「「お前が、好きだから」」
見事に重なる二つの声。
見詰められれば一瞬何もいえなくて、慶次の咽が思わずグゥ、と鳴る。
「い…言ってろ、バカッ!!!」
部屋の外へと駆け出した慶次の顔は真っ赤に染まって。
後姿が見えなくなった頃、思わず政宗は噴き出した。
小十郎の肩は小刻みに震えて、明らかに笑いを堪えていることが見て取れる。
腹を立てて出て行った慶次は、腹が減ればまたやってくるだろうことは重々承知なので、二人が追いかける事はない。
未だ残る笑いを引き摺りながら、何か手作りで食うものでも用意するかと、政宗は家庭科室へと向かう。
そんなこんなで手を付けない、政宗の机に溜まった書類を処理するべく、小十郎は仕事へ戻る。
これが、伊達政宗と片倉小十郎の、密かなる(?)楽しみなのである。
ただ一つ、告げる気持ちには偽りがないことを、慶次が気付くのはいつの日か。
「慶次、こんな話を知ってるか?」
「ん?なになに?」
「…こりゃずっと、変わらねェな…」