通い猫5題(政慶)





1:君は通い猫



ふらりと、それはやってきた、

「城の、桜が綺麗でさ」

小さくそうか、と頷いて。
嗚呼これは。
願っても無いチャンス。















2:初めて家に招いた日



唇を、塞いでみた。
丸く見開かれた目は、綺麗で。

そのまま喰ってやろうかと思う心を抑えることの、なんと苦痛な事か。

「…手が早いって、言われないかい?」

「アンタが、可愛過ぎるからだろう」

人の所為にするなよと。
溜め息を吐く顔に、もう一度。














3:恋の餌付け初め



「Come on,腹が減っては戦は出来ぬ…違うか?」

親しくなるにはまず腹を手に入れるに限る。
手作りの料理を並べれば、もう、kissのことなど許されているのだろう。

だって笑顔は、こんなにも眩しい。















4:外で出会うと他人行儀



「ここは通さねェ…1回言ってみたかった台詞だね」

向け合う得物。
ぶつかり合う気迫。
背中を駆け抜ける、極上の興奮。

空気すらも切れるこの瞬間に、馴れ合いの手加減など不要。















5:ごはんだけ? お泊りは?



「する」と。
小さく、一度だけ頷いた。

これは合図だ。

抱き締めた身体を、ゆっくりと畳の上へ押し倒す。
ふらりと出て行くその前に。
もう一度、肌に刻み合う。



「桜が咲いたら、また来るよ」



きっと互いに、待ち切れないけれど。