三種の毒
1:金平糖石の君 「君を知る幸せと不幸せ」(就慶)
胸に宿る甘やかな痛み。
チクリ、チクリと、刺していく。
それは何時しか全身を覆い、蝕んでいた。
そして指の先まで、それ一色。
だがその侵された状況を、心地良いと思う己がいることもまた確か。
以前手にした書物にあった。
これが、恋というものか。
なんという、猛毒か。
2:夾竹桃の王 「生かそうか、殺そうか」(親慶)
「強いな、アンタ」
仰向けで大の字に転がっている。
顔の真横へ、既に手放された慶次の得物を突き立てた。
喧嘩とはいえ、本気でやりあったこの一戦。
そして、魅せ付けたこの強さ。
さて。
「俺の物に、なるか?」
答えなど当に、分かっているけれど。
3:鳥兜と蠍 「毒には毒で贖えばいい」(政慶)
一目見て、互いに堕ちた。
刀を交えて殊更に。
「慶次」
「政宗」
呼び合う声でもっと。
深く。
深く。
雑ざり合う空気は、濃密。