ちょっとヘタレな忠犬で五題(女慶と真田主従)





1:時には頼もしい番犬(幸慶)



やっぱり、俺は女だと実感したその時。
目の前の男は、普段見せないような顔で微笑んでいた。
素手で殴り倒したので、赤く滴るそれも。
妙に、似合っている気がした。

「慶次殿、お怪我は」

言葉より今は、その腕で。















2:僕のすごい幸せ。君がくれるご褒美。(佐慶)



抱き付かれて、感じる柔らかい感触。
背中に腕を回して、強く抱き締めるともっと感じる。

「…佐助ってホント、コレ、好きだよな」

「男なら誰だって好きよ。ま、俺様は特に…かもね」

「ふーん」

「勿論、慶ちゃんのだからってのは、忘れないで?」



1番1番、大事なことだから。















3:誘ってるみたいな君の匂いから逃げた(佐慶)



「ごめんね」

思考回路が全部イカれてしまうような感覚に襲われる。
背筋が震えて、全身の毛が奮い立つ。
抑える何かが切れてしまう。

耐えられなかった、臆病な俺。

「愛してるんだよ、慶ちゃん」















4:「狼になりたい」なんて言えない(幸慶)



この膝で眠ることが、とても心地良い。

ころりと転がって。
慶次殿の腹へ、顔を押し当ててみる。

嗚呼。
嗚呼。

喰べてしまいたいのに。



「喰べればいいのに」














5:ついて行く僕を、時々振り返って下さい(幸慶←佐)



木漏れ日の下。

長い髪を揺らして。
ふっくらとした唇を持ち上げて。
慶次が微笑む。

溢れ出す、余りにも温かな感情は残酷だ。
それでも佐助は少しだけ、その距離を詰めた。