艶色の戸惑い五題
1:ついばんだ蜜の味(政慶)
左側で眠る相手の布団の上へと片手を乗せる。
身を寄せて、触れ合わせた唇。
じん、と。
疼く様なこの感触は、胸か、唇か。
2:柔らかな果実を剥くように(佐慶)
「恥ずかしいの?」
「…当たり前だろ…」
でもこの開かれた身体を閉じる事は、しないから。
3:止め処ない指(政慶)
夜目も利かない真黒なこの部屋の中、よくもまァこんなにも動くものだと。
布団の上横たえられた身体で、悪態をつく。
「暗闇には、 慣れてる」
光る隻眼と視線かち合うその間も、するすると、動いていく。
するすると。
するすると。
そうして熱い吐息が、ほう、と出た。
それでも指は、まだ。
4:眦の雫(幸慶)
頭を振ると垂れてしまうから自然と唇をそこへと寄せた。
大きな目が、更に大きくなるものだから、漸くその行為の意味を思い出す。
照れはあれど、悔いは無い。
生まれて初めて好いた人を、抱き締めた。
5:移り香と残り香(?慶)
気付くのは、朝。
自分であるのに絡み付くのは自分でない匂い。
不意に、胸が高鳴る。
きっとこの襖を開いても、香るのは誰のものなのかなど、もう分かりきっている。