【誰が為に】





男と男の真剣勝負に茶々を入れやがった、竹中半兵衛は豊臣の軍師。

豊臣といえば、兵の数も国土の広さも天下一と名高い大武将だ。

その豊臣の情報を求めて、攻め入った長谷堂城で出会ったのは不思議な男だった。

かなりでかい体格に、女みたいに長い髪を髷にすることもなく頭の高いところでひとつに結んでいる。

それが不思議とこの男には似合っていた。

それはたぶん、かなりでかい男らしい奴だというのに、こいつがどこか雅やかで……、そう、言うなれば歌舞伎の女形のような妙な艶をだしているからだろう。

 

しかし、そんな雰囲気をよそに体格どおりかなり強い。

敵将の頭を秒殺したにもかかわらず、俺がこんなちんけな場所にうだうだと留まり続けている理由は、この男が加勢した直江軍をなかなか一掃出来ないからだ。

チッ、この俺に歯向かうなんざ、いい度胸の馬鹿だ。

 

「おい、お前。名前はなんていう?」

「ん?いいじゃん、名前なんて。喧嘩には関係ないじゃないの。」

 

六爪で男に打ち込む瞬間、俺は思わず男にそう名を聞く。

こんな強い男なら、きっと名をはせた軍人のはずだから。

なのに、男は体格に似合いのどでかい刀を振りかざして俺の攻撃をはじくと、のらりくらりと俺の質問をかわす。

その腕前は、真田幸村かそれ以上。

久々に熱くなるものを感じながら、俺はにやりと笑った。

 

「じゃあ、俺は名を名乗っといてやるぜ。どこの誰かも知らない奴に殺されるのはいやだろう?」

「いや〜、それも必要ない。俺はあんたを知ってるよ。独眼竜・伊達政宗っていやぁ、有名人だからね。」

HA!俺を独眼竜だと知って直江軍に加勢したのか?あんた、とんだ馬鹿だぜ。」

「喧嘩は好きだけど戦は嫌いでね。弱いものいじめもついでに言えば大嫌いとくりゃ、加勢するのが男ってもんだろ。」

 

男はそう言うと、今度は自分からだとでも言うように強力な一撃を放ってくる。

そう、この男の隙はここだ。

力もスピードもこの男は一流。

だけど、大技を放った後に必ず隙が出来る。

そして、その一瞬を見逃すほど俺は馬鹿でもお人よしでもねぇ。

 

「もらったぜ!!」

 

俺はその隙に一気に懐まで入り込むと、得意技を繰り出す。

その瞬間に、刃は逆刃にしておいた。

 

別に殺してもよかった。

でも、なんとなく殺すのは惜しいと思った。

こんなことは初めてだ。

俺ともあろうものが、とんだ甘い考えだ。

 

「ぐっ……!!」

 

俺の一撃で男の体が一気に吹っ飛ぶ。

だが、あの瞬間になんとか急所をはずしたのだろう。

男は立てないまでも気絶まではしなかった。

本当、いい腕だ。

 

「痛てて。あんた、本当強いねぇ。……俺を殺さなかったのはどうしてだい?」

 

どうして?

どうしてもこうしてもあるものか、自分でも分からないことを聴かれたって答えようがありゃしねぇ。

でも、そんなことを言うのもこの男の手前、そして俺を見ている部下の手前言うわけにはいかねぇ。

 

「聞きたいことがある。」

 

そんなことを考えて、そう言葉が出たのはほとんど無意識だった。

 

「聞きたいこと?なんだい?」

「豊臣について何か知らないか?」

 

そう俺が言った瞬間、男から一瞬にして表情が消えた。

さっきまでの、どんなときでも余裕をなくさないような笑みは消え失せ、能面のような無表情。

だがそんな表情は、この男の不思議な艶をよりいっそう引き立てた。

 

「そんなこと聞いてどうするんだい?」

「……真剣勝負の途中に茶々を入れやがった挙句に、俺の部下に怪我ぁさせやがった。落とし前をつけさせてもらう。」

 

そう答えた瞬間、男から無表情の仮面は剥がれ落ちた。

さきまでの余裕の表情とまでは行かないが、なんとか笑みを浮かべた顔で首を横にふるう。

 

「やめとけやめとけ。ほっとけよ、あんな奴。そんなことより、喧嘩に酒に恋!楽しいことはいっぱいあるぜ。」

「恋?HA、ずいぶん色っぽいこというじゃねぇか!」

「恋はいいもんだよ。温かくって、それだけで幸せになる。」

 

そう言った瞬間の男の表情をなんと言えばいいだろう。

つらそうで、切なそうで、悲しそうで……。

その表情に名前はつけられそうになかったが、どう見ても『幸せ』というものには程遠かった。

 

目を伏せた男の表情を見つめがら、俺は心の中で舌打ちをする。

胸が騒ぐ。

……いったいなんだってんだ、この気持ちは。

 

「そんなものに興味はねぇな。いいから、豊臣の情報を吐け。負けたんだから、情報のリークぐらいはしてもらうぜ。」

「あ〜あ、もったいないねぇ。あんたせっかく強いのに。……ま、あんたの言うことももっともだし情報は教えるさ。」

 

男は「もったいないもったいない」と言いながらも、俺に豊臣の情報を教えてくれた。

だが、きっとそれはこの男の知るすべてではない。

情報を話す端々で、いったん唇を引き結んだり、苦笑いしながらごまかしたりする。

そのたびに、あのなんとも言えない切なく悲しい表情が男の顔に浮かんだ。

それは、見ているこっともつらくなりそうだが、それ以上に妙に扇情的。

 

だからかもしれない。

男が知っていることのすべてではないと分かっていても、男の差し出したほんの僅かな情報だけで満足してやることにしたのは。

 

「それだけわかりゃ、十分だ。……おい、お前ら!行くぞ!」

「お?もう行くのかい、独眼竜。気が短い奴だな〜。もうちょっとゆっくりしていきゃいいのに。」

「……伊達政宗だ。」

「ん?悪い悪い、政宗。俺は……」

Stop!」

 

今度は自分から名を名乗ろうとした男を、俺は思わず遮る。

なぜ遮ったのかは分からない。

でも、今は聞きたくないと思った。

 

「今度また俺が喧嘩に勝ったら教えてくれ。……Are you O.K.?

「ははは、あんた面白いな。よっし、気に入った!また喧嘩やろうぜ、盛大に!」

 

男は馬鹿笑いすると、にぃっといたずらっ子のように笑う。

さっきまでの切ない色は浮かんでいないその表情に、俺はなぜかほっとする。

チッ、やっぱり今日の俺はおかしいぜ。

 

「行くぜ、野郎共!落とし前をつけになっ!」

 

俺は胸につかえる何かを吹き飛ばすように、盛大に声を張り上げる。

とりあえず、今は妥当豊臣。

真剣勝負に茶々を入れた落とし前に俺の部下に怪我を負わせた落とし前。

両方つけさせてもらう。

そう意気込みながら、ふわりと浮かんだ胸の中の想いを隅へと追いやる。

だって、そうだろう?

あの男があんな切なそうな表情をする理由が、もしかしたら分かるかも知れないなんて思ったなんてありえねぇ。

でもその想いは、隅には追いやれても消せるものではなかった。

























マイベストフレンドなオコメちゃんから無理矢理強奪しました(爆)
ぬぁああああ…ッ!!!!(奮)
神が降りたと、本気で思いました!!!
大本命が武田軍でしかも佐幸な彼女にこんな素敵なものをもらえるとは思ってませんでしたよ。
というか冗談で「下さい」っていったら本気で、ものの3日位でこんなのくれたなんて、アンタどんだけなんですかと、言ってやりたい。
これで短いとか言割れたんですが、じゃあ私って一体何なんだろう(遠い目)
これが才能?才能なの??(ホロリ)
この微妙な距離感がたまりません!!
私的に政慶ってのは、政宗→慶次から始まるのが1番好きなのでv
慶次ストーリーからじゃなく、政宗ストーリーの長谷堂城からスタートってのが、また乙ですね!
言わずとも分かってくれてるのがミラクルなんだと思います。
流石我が友v
今後この2人が拳で語り合って更に大きくなる政宗の恋心とか、見たいけど、そこまで我が儘いえないので…あとは妄想で補充しときます。
はー、政慶が好きだ好きだ!

ホントに、ホントに、ありがとうございましたーーっ!!!





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