次に慶次がやってきたのは、以前よりもまた、陽の傾いた日のことだった。
「ちょっと、ここに来る途中で馴染みのじいちゃんにあっちゃってさー」
確かに慶次には馴染みや友人が多い。
きっと隣をすれ違って、一言でも話せばそれはすでに知り合いで。
そうやって城の中の若い集も次々と知り合いになり、友人になり、馴染みになっていったことを、政宗は知っている。
調度茶菓子を運んできた小十郎も交えて、3人でのんびりとした時間を過ごした。
出したのは二度目のはずのずんだ餅。
初めてだと美味そうに食べた慶次。
「美味いって前にも言ってたぜ?」
「そうだっけ?まあでも…毎度毎度美味いって言えるのはいいことじゃないか!常に感動できるというか」
「物は言いようだな」
「何事も、前向きにいかないと、だろ?」
やはり楽しそうに笑う顔ではあるのだが。
何処か感じる違和感を拭う事が、今回は何故か出来なかった。
小十郎の名前を言い淀み、よく襖にぶつかって。
身体には、妙に痣が増えていた。
少しずつ、少しずつ。
また今日も、少しずつ。