最初は小さな物忘れから始まる。
いつもよりも、陽が傾いてから伊達の城へと訪れた風来坊。
浮かべる笑顔は、いつものままで。
「頭の飾りを外したのは良いものの、うっかり何処に置いたか忘れちまってさー…失敗失敗」
照れ臭そうに頭を掻いて、政宗の部屋のいつもの座布団へと、どっかりと深く腰を下ろす。
「全く…待ち焦がれたぜ?」
「はは、だから悪かったって。でもなんか、どうしても見付けたくなってさ」
悪びれる態度とは反対に、楽しそうに笑うその顔を見ては、もう何もいえないではないか。
思わずつられる様に笑みを浮かべると、政宗は慶次の顎へと手を掛けて、触れるだけの口付けを落とす。
次第に日も落ちてくる。
今日は泊まるとの慶次の申し出に快く応じ、まずは軽い運動をと2人で身体を傾けた。
折角探した髪飾り。
だけどいつもよりもそれは何処か格好が悪いこと、気付いたけれど政宗は黙っていた。
きっとそんな日もあるだろう。
それは小さな物忘れ。
ホントに小さな、物忘れ。