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【痴話問答】
【真相探求合戦と迸り】
【極甘日】
【触れる】
【君が1番】
【痴話問答】
「佐助佐助ー」
「なーに、慶ちゃん」
ソファーに座ってる俺の後ろから、慶ちゃんがじゃれ付いてくる。
頭の後ろに当たる胸の感触がすっごい気持ちいい……じゃなくて。
振り返ったら、上機嫌なのかお日様よりも温かい笑顔で俺を見てた。
「佐助に、問題です」
「問題?」
「そう!」
何よ唐突に。
と、口をついて出そうに鳴る言葉を、ぐっと飲み込んで。
こんなに楽しそうな顔を壊すのもなんなので、浮かべるのは此方も笑顔。
「どーんと、出してみなさい」
首から腕が離れて、慶ちゃんは俺の隣へ座る。
徐に此方を向くと、コホン、と改まった咳を一つ。
「すっごく甘くて、食べるととろけちゃうもの、なーんだ」
………。
『後ろから見えちゃってるよ、包み紙。』
なんて、言える訳もない。
答えは、カレンダーの日付から直ぐに分かったのだけれど。
身を乗り出してキラキラした目で此方を見ているこの顔を、もう少し見ていたいからさ。
「んー、なんだろー…」
「えー?佐助わかんねーの?」
「2つあって、迷ってる」
肩を竦めて、惚けてみせる。
そしたら不満げに尖る口がまた可愛くて。
よくもまあ公も表情が変わるものだと、ちょっと笑ってしまった。
「…分からなくて、笑ってるのかよ…」
「いやいや、そういうわけじゃないよ」
「じゃーどうい…う…」
まだ何か言いたそうな唇は、自分のもので軽く塞いでしまうに限る。
啄ばんでも拒まれない事に気を良くした俺は、距離を詰め、慶ちゃんの背中へ腕を回す。
間近にある顔をじっと見詰めたら、二人とも何となく笑っちゃって。
隠したチョコレートの入る箱を、背中越しに受け取った。
そうしたら、俺は至極柔らかく、囁くんだ。
「慶ちゃんのくちびるも、甘くて、俺様とろけそう」
「バカ…そんなこと言わなくていい」
「ホントなのに…。…ね、開けていい?」
「ん」
相手の身体を抱き締めたまま、包み紙を取り、箱を開けると。
箱の中には、綺麗に並ぶピンクと黒のハートのチョコレートがひーふーみー…15粒。
「真剣に、選んだんだからな」
「うん、嬉しい…ありがと、慶ちゃん」
恥らうわけでもなく、得意げに言っちゃう辺り、なんとも慶ちゃんらしい。
しかしその様子を思い浮かべるだけで、表情が緩んでしまう俺様って結構末期。
一粒、手に取って口に咥え。
そのまま、キスをした。
ほらね、やっぱり。
「甘くて、とろけそう」
身体を、ソファーに押し倒す。
チョコよりもっとずっと甘い事など、疾うに分かりきっていた。
「ねえ、さっきの答え」
「ん?」
「アレって、慶ちゃんでしょ」
「…バカッ!!」
【真相探求合戦と迸り】
「なァ佐助」
「なーに?旦那。団子ならさっき食べたでしょ」
「ああ、今日の団子はまた格別に…って、違うッ!!」
「もー、大声出さない出さない。じゃあ何?夕餉の献立?それならきんぴらごぼうとか聞いたような」
「何!?昨日は筑前煮と聞いた筈…、…いやそれも違うッ!!」
「いーねー、どしたの旦那、何処でそんな笑い覚えたの?」
「そっ…そのようなもの覚えてはおらぬ!そうではなくてッ!」
「ハイハイ、そろそろ真面目に聞きましょうか。何か悩み?」
「…うむ…」
「あらら、妙に神妙な顔」
「では聞くが…」
「どーぞ?」
「俺は…慶次殿にほ…惚れっ惚れて、いる…のか?」
「………」
「佐助?」
「…え、あ、いや余りに藪から棒で…」
「佐助は、如何思っている?」
「ど、如何思うって?」
「慶次殿のことだ」
「は?」
「その…すっ…すすっ…好いて、おるのか…」
「は…」
「最近、よく二人で話しているのを見かける」
「や、あの…」
「それを見て、何故か胸がざわつく」
「旦那、あのね」
「このざわつき故に、俺は…慶次殿を、すっ好いて、いる…のかと…」
「え、と…ね…?」
「どうなのだ、佐助」
「…お、俺様ちょっと所用!御免ね旦那ッ!!」
「あ、待たぬか佐助ッ!!」
矢継ぎ早の質問を往なし。
止める声をまたず、佐助の姿はそこから消えていた。
部屋の中には、この状況に憤慨するも、またしても深く悩み始める武士が1人。
城の外には、胸の内を悟られかけて逃げ出し、青ざめたり、赤らんだりする忍が1人。
そして。
「あのー…俺何時になったら入れてもらえるの…」
珍しく城門から入ろうとするも、城主が人払いをしている為に了解が取れず、頑固な門番に入れてもらえず、待ち惚けをくわされる風来坊が、1人。
【極甘日】
「ねえ…今日ってホワイトデーでしょ?」
「そーだね」
「バレンタインのお返しがしたいって、言ってたよな?」
「うん、言った言った」
「じゃあ何で、佐助が俺の上に跨ってるのかな?」
既に諦めて全身脱力。
逃げようとも思いはしないけれど。
「だって、お返しは俺の愛だから」
これはまた、ありきたりな事を言う。
嬉しいんだけど、素直に嬉しいと言えないのは何故なのか。
けれど結局そのまま全身隈なく愛されて。
いつもよりも念入りなその行為だっただけに、満たされたのは、確かだから。
目の覚めた慶次の左薬指に、こっそりリングがはめられていたのは、また、別のお話。
【触れる】
ツイと、眠る慶次の頬へと、指先を伸ばす。
触れる。
温かな人の体温を、改めて知る。
「我には不用なものと、思うておったものを」
不思議と、欲してしまう。
この体温だからこそなのだろうと、既に理解はしているものの。
それを口に出すことは、躊躇う。
「暫し、このまま」
今はまだ、起きてくれるなと、願いながら。
【君が1番】
政宗は格好良い。
幸村はワンコ。
佐助はちょっとスケベ。
元親は優しい。
元就は意外に可愛い。
皆それぞれ、いいんだけどさ。
小十郎さんは、特別。
誰よりも大人で、抱き締めてくれる腕は誰よりも温かい。
「お前は、俺じゃないと駄目なんだよ」
我が儘な俺。
甘えたな俺。
身体を重ねるのが好きな俺。
それを全部全部包んでくれるのは、貴方。
「そう思うなら、放さないでよ?小十郎さん」
「頼まれても」
その後の言葉は、笑みを含んだ口付けで消えたけれど。