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【夜の暖】
【ただ只管に幸せを思う】
【眠れ眠れ、愛しい人】(★)
【この仔等をこの手によりて命の限り護りけり】(小十郎+政慶+綱元)
※当サイトの「鬼庭綱元」とは。
【これもまた愛情の深さ】(※:R15?)
【夜の暖】
秋の夜は。
衣一枚でいるには寒く。
かといって着込むほどの寒さもなく。
「あ、お月さんが出てきた」
「雲の流れが速いな…明日は雨か?」
そんなときには。
着流し越しに伝わる体温が、心地良い。
他愛もない会話も、心地良い。
「雨は嫌だなぁ、外出られない」
「嘘吐け、雨でも出ていくくせに」
2人で顔を見合わせて。
背中から抱き締められた、慶次の顔が綻んで。
背中から抱き締めた、政宗の表情が和らいだ。
「俺さ、なんとなく、秋が好きになった」
「Me too.」
枯れ葉が、ひらり、落ちていき。
虫が、切なく、恋を謳い。
夜が、早々に、世を隠す。
何故か人恋しい秋の夜。
でも、傍にいれば。
貴方が、傍にいれば。
【ただ只管に幸せを思う】
北風が強くなる。
毎年の事でもう重々身に染みていることとはいえ、寒いものは、寒い。
身を縮め、肩を竦めて。
筆を握っていた手を離し。
背を向けていた、不本意ながら自分よりも大きな身体を抱き締めた。
「なんだい?急に。仕事は?」
「寒ィから、暖をとる」
「や、だから、仕事…」
「今は、これがwork」
「なんだそりゃ」
言いながらも、振り払われる事はないことは知っている。
政宗は、自分よりも温かい慶次の身体に頬を寄せる。
じんわりと伝わる体温。
心地良い熱。
そして。
規則正しい心音を聞きながら、言葉なくとも込み上げる慶次への愛しさ。
殺戮の剣を振るうこの身なれど、こんなにも穏やかな感情があるということが、嬉しくて。
ゆっくりと、ゆっくりと、目を閉じた。
「…ちょっと政宗、寝るなら布団にしてくれってば…」
伝える声音は至極優しく、結局そのまま、寝てしまったのだけれど。
【眠れ眠れ、愛しい人】
政宗は、俺を抱き締めて眠るのが好きだ。
胸の感触を確かめながら。
そして時折、その胸に顔を埋めて眠る。
別に何をするわけでもなく。
ただ、黙って。
それは、今も。
「くすぐったいんだけどな…」
言いながらも俺は、政宗の頭を抱き締めてやる。
それは、夜も深けた頃、依然聞いた小さな呟き。
「…母上……」
俺が眠っていると思って言った事だろうから、敢えて、黙って。
次の日もそれを茶化したり、追求したりする事はしなかった。
直感とでも言うのか。
しちゃいけないっていうことが、分かったんだ。
政宗が俺を母と重ねる事はしていない。
だけど、何処かで、温もりを求めているんだろう。
俯いているから顔は見えないけど、でも。
だから俺は、抱き締めるんだ。
子供にするように、優しく。
包み込むように、柔らかく。
ねえ政宗。
良い夢を、見てるかい?
【この仔等をこの手によりて命の限り護りけり】
季節の変わり目には、風邪を引きやすい。
これはある種定説なのだが。
別に風邪を引くのは、変わり目だけではない。
ほんの少し気の緩んだとき。
何もないときだって。
普段、全くそんな気配のない者も。
それは所謂。
「鬼の撹乱」
そう。
それが今の片倉小十郎である。
「大丈夫かい?小十郎さん」
「全く…気が緩んでる証拠だぜ?小十郎」
布団を何枚も重ねられ、横になる小十郎の顔を、並んだ二つの顔が見下ろしてくる。
小十郎からすれば未だ幼い二つの顔。
不安げにこちらを見る様子に、思わず布団の中で肘をついて。
「申し訳ありません、政宗様…。…しかしこれくらいの風邪なら、問題なく…ッ!?」
起きあがろうとする身体は、押さえつける慶次によって無理矢理布団へと張り付けられる。
「何言ってんだよ!風邪のとき位、大人しく寝てなって!」
「慶次の言う通りだ。それで悪化したら元も子もねェ」
きっぱりと政宗に言い放たれては、小十郎には言い返すことは出来ず。
短い溜め息を零し、再度布団の中へと戻る。
「では、お言葉に甘えて…」
「城のことは、気にしなくていいから!」
「Wait,なんでアンタが言ってんだよ」
「いーじゃん、小さいこと気にしなさんなって」
「小さい…そうか…?」
そんな二人のやり取りを見ている内に、小十郎の瞼は重くなり。
全身を覆う熱も手伝ってか、ゆっくりと、意識を手放した。
政宗と慶次も、静かに部屋を出る。
目が覚めたのは夕暮れ。
深く眠ったことが功を奏して、風邪独特の体の怠さはすでにない。
ただ、妙に布団が。
「重い」
起きて早々眉間へと皺を刻みつつ小十郎は身体を、ゆっくりと起こす。
そして自分の布団の上に居たのは。
「政宗様!前田…!」
二人で、手を握って、熟睡するのは一国の主と風来坊。
驚くなという事の方が、無理という話である。
未だ夢の中なのかと、整わない前髪を後ろへと流し暫し呆然と二人の様子を眺めた。
そこで、開かれる襖に小十郎は顔を上げる。
「小十郎、目が、覚めたか?」
「綱元殿」
立っているのは掛け布団と膳を持ったを手にした鬼庭綱元。
静かに部屋の中へと入り、政宗と慶次の背へと掛けてやると小十郎の隣へと膝を付く。
「熱はもう無いようだな」
「綱元殿、これは…」
「まったく…働き過ぎじゃないのか?」
「いや、そういうことが聞きたいわけではなく…」
「政宗様は、政の書を当面先の分まで全て片付けた」
「だから俺は……何?」
「お前の分の書にも目を通し、確認済みだ」
思わず、自分の耳を疑う。
視線は自然と、自分の足下で眠る政宗へ。
「それから、お前の畑…前田の風来坊のお陰で、雑草は一本もなければ間引きも完璧。ついでに新しい野菜の種も蒔いてある」
隣で眠る慶次へ視線を移す。
確かに爪の間には泥が入り、顔はどこか汚れている。
「その他にも、兵の修練や見回り等、お前の仕事は全て…二人がやってしまった。全く、出る幕がない」
慶次の髪に付いた木の葉を取りながら、綱元は楽しげに笑みを浮かべた。
「それに、幾度も二人で部屋を覗いて…全てを終わらせると同時に、この部屋に篭もって、お前を診ていた」
ポン、と小十郎の肩を叩き。
「それもこれも、お前の為だぞ?小十郎」
これは子供にすることであると、小十郎も分かっている。
それでも、自然に手は伸びて。
ゆっくりと、起こさないように、二人の頭を撫でていた。
表情からは眉間の皺が消えて。
「それと、これは…二人が作った粥だ。まあ主に政宗様が作られていたが」
吹き出す綱元の表情で、その情景を想像することは容易。
膝の上へと膳を乗せ、器を手に、粥を啜る。
「…塩辛ェ…」
「最後の味付けは、前田の風来坊だから」
言いながら、綱元は立ち上がり。
「見たこともないほど真剣に、味付けた結果だ」
襖へと、手を掛ける。
「大層、想われているな、小十郎」
そう一言、言い残された。
全くだと、そう思った。
「政宗様!いつまで寝ているおつもりか!前田ッ!朝飯抜きにするぞ!」
次の日の朝、城の中を響き渡るのはいつもの怒号。
跳ね起きた二人は、思わず顔を見合わせる。
「小十郎さん、元気になったのか!」
「ったく…1日で復活かよ!」
目を細め笑い合い、部屋から飛び出すと一直線に小十郎の元へ。
走って来た勢いそのままに抱き付かれ、三人で倒れて、頭には拳骨。
それでも、向けられる満面の笑みに小十郎が本気で怒れるわけなどない。
この二つの笑みを、無くしてなるものか。
俺の一等、大切な。
「この小十郎が、命を懸けて」
この腕の中の二人へと、誓う。
【これもまた愛情の深さ】
ねえ、政宗は俺のこと好きかい?
Yes,当たり前じゃねェか。
「…っ……は、くッ…」
俺もね、政宗のこと、大好きだよ!
ああ、言わなくても伝わってるぜ。
「…んっ…ふ、ぅ…」
じゃあさ、俺のこと、どれ位好きなんだい?
An?あー…そうだな…。
「…慶次、慶…次っ…」
力尽き、動かないこの身体にさえ、欲情してしまうほど。
※当サイトの「鬼庭綱元」設定
片倉小十郎、伊達成実と共に伊達三傑の1人で、年齢は一番上。
小十郎とは義兄弟である。
性格は白というよりも黒く、笑顔で人を陥れることが出来る。
小十郎や成実を良いオモチャとしている。
何をおいても政宗第一で敬愛しているのだが、慶次は別枠の可愛い存在。
隙在らば二人とも自分の物に出来ないか思案中。
政宗との会話時
「私にお任せ下さい、政宗様のご期待は裏切りません」
小十郎よりも柔らかめな現代風の敬語。